高知地裁「ベトナム人留学生への退学処分は違法」
朝日新聞デジタル記事(2023年9月23日)
「ベトナム人留学生への退学処分は違法、地裁が学校側に慰謝料命じる」
高知県香南市の専修学校「香南学園」で介護を学んでいたベトナム人の元留学生2人が、違法な退学処分を受けたとして、学校を運営する社会福祉法人香南会(香南市)に卒業証書の発行などを求めた訴訟の判決が22日、高知地裁であった。佐々木隆憲裁判長は退学処分を違法と認定し、慰謝料など計144万円を2人に支払うよう同法人に命じた。
香南学園では介護福祉士の国家試験受験に必要な単位を2年間で履修できる。2019年4月に入学し、学生寮に入った女性(24)と男性(31)の元留学生が提訴していた。このうち女性は「卒業見込み」で21年1月に国家試験を受け、3月に合格した。「(資格)取得後は香南会で3年以上、業務に従事することを希望している」との誓約書に署名していたが、ほかへ就職したいと2月下旬に学園側へ申し出たところ、「卒業書類は出さない。自主退学だ」と言われて退寮した。
佐々木裁判長は誓約について、「あくまで希望で、義務づけではない」と判断。女性は卒業要件を満たしていたとして、卒業証書を発行した上で、慰謝料80万円などを支払うよう同法人に命じた。
男性は、禁煙の学生寮で喫煙していたことが判明して20年12月に退学処分となった。判決は「ただちに学外に排除することが、教育上やむを得ないと認められるほどの重大な規律違反行為とは言えない」として退学処分を違法と認定。慰謝料50万円などを支払うよう同法人に命じた。
判決後、元留学生2人と弁護士がオンライン会見に応じた。女性は21年4月に「卒業資格を有する」との仮処分決定を高知地裁で受け、現在は東京都内で介護福祉士をしている。男性も都内の福祉施設で介護の仕事をしているという。女性は「卒業証書を発行しろと認められたのはすごく嬉しかった」と話した。
2人の弁護士は「留学生に対し、就職先を縛ったり、生活態度を巡って乱暴な対応をしたりしてはいけないと判決が示してくれた」と語った。(蜷川大介)