大学予備教育別科参照基準

大学における日本語等予備教育別科等に係る参照基準(ガイドライン)

制定 令和4年8 月31 日

文部科学省高等教育局

1.趣旨・目的

大学における留学生の受入れの適正化及び在籍管理の徹底並びに専ら日本語教育を行う留学生別科における教育の質の確保を図るため、「大学学部進学のための予備教育を行う留学生別科等の基準等の在り方について(協力者会議まとめ)」の内容も踏まえ、大学の別科その他学位の取得を目的としない課程(以下「別科等」という。)における、専ら日本語教育その他の大学の学部等へ入学するための予備教育(以下「日本語等予備教育」という。)を実施する 際に参考となるべき基準を示し、各大学の別科等における 教育の水準の向上を喚起することで、 もって我が国の高等教育機関における 外国人留学生の受入れ体制に対する信頼性の確保に資する ことを目的とする 。

2. 定義・ 適用対象等

本参照基準が対象とする 日本語等予備教育を実施する別科等(以下、「日本語等予備教育別科等」という。)とは、次のいずれかに該当するものをいう。

・ 大学の学部、短期大学、高等専門学校又は専修学校専門課程(以下「学部等」という。)への入学(別科及び専攻科を除く学位の取得を目的としない課程(以下「非正規の課程」という。)への在籍を開始することを含む。以下同じ。)を課程の目的に含むもの

・ 次のアからエまでのいずれにも該当するもの

ア 日本語等予備教育別科等に在籍する者を対象とするものであること。

イ 入学資格として求める日本語能力の水準が、独立行政法人国際交流基金及び公益財団法人日本国際教育支援協会が実施する日本語能力試験におけるN2相当未満であること。

ウ 過去3 年間の当該課程の修了者のうち、 学部等に入学した者が二分の一以上であること。

エ 年間の授業時数の二分の一以上が日本語教育又は日本語により教育を行う授業であること。

3 . 参照基準内容等

日本語等予備教育別科等として参照すべき 基準は、以下のとおり とする 。

① 教育課程に関すること

教育課程が、次のいずれにも該当するものであること。

・ 日本語等予備教育別科等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を開設し、体系的な教育課程を編成していること。

・ 学部等への入学という日本語等予備教育別科等の教育上の目的にふさわしい日本語能力の到達目標を設定していること。

・ 修業期間の終期が学部等の入学時期を勘案して適切に定められていること。

・ 1週当たりの授業時間が20単位時間(1単位時間は45分以上とする。以下同じ。) 程度が確保されたものであること。

・ 修業期間1年当たりの授業期間が、原則として35週にわたること。

・ 修業期間1年当たりの授業時数が原則として760単位時間以上であること。

・ 修業期間1年当たりの日本語教育に係る授業時数が600単位時間以上であること。ただし、教育上必要があり、かつ、十分な教育効果を上げることができると認められる場合は、日本語教育に係る授業時数を減じ、日本語教育以外の他の科目と合わせて 600 単位時間以上とすることができる。

② 収容定員等に関すること

・ 収容定員については、教員数、校舎面積、教室面積、設備その他の条件に応じた適切な数を定め、著しくその数を超えて入学させないこと。

・ 収容定員の増員は、次のいずれにも該当する場合を除き、行わないこととしていること。

ア 増員する人数が増員前の収容定員の5 割以内であること(増員後の収容定員が100人以下となる増員の場合は除く。)。

イ 増員前の時点において、収容定員のおおむね8割以上の学生(非正規の課程に在籍する者を含む。以下同じ。)が在籍していること。

ウ 過去1年以内に増員を行っていないこと(1年以内に再び増員することについて合理的な理由がある場合を除く。)。

エ 日本語等予備教育別科等を開設する大学が、収容定員の増員を行う年度の前年度において、地方出入国在留管理局から適正校である旨の通知を受けていること。

・ 同時に授業を受ける学生数は、次のいずれにも該当していること。

ア 日本語教育の授業については、原則として20人以下であること。ただし、学生の日本語能力の水準及び教育の方法を考慮して適切な場合には、大学の学部、大学院及び短期大学の学科の課程(以下「大学の正規の課程」という。)における教育に支障を生じない限りにおいて、20人を超えて、教育効果を十分に上げられるような適当な人数とすることができる。

イ 日本語教育以外の授業については、その方法及び施設、設備その他の諸条件を考慮して、教育効果を十分に上げられるような適当な人数であること。

③ 教職員に関すること

・ 日本語等予備教育別科等には、長のほか、 日本語教育を担当する専務教員(当該大学の専任教員であって専ら日本語等予備教育別科等の教育及び運営に携わる者をいう。以下同じ。) 、 兼務教員(専務教員ではない者をいう。以下同じ。)及びその他必要な職員を置く こと 。

・ 日本語等予備教育別科等の長は、教育に関する識見を有し、かつ、教育、学術又は文化に関する業務に5 年以上従事した者であること。

・ 教員数は、授業の実施等に必要な体制として、次のいずれにも該当すること。

ア 3人以上、かつ、学生の収容定員20人につき1人以上の教員が配置されていること。

イ 1人以上、かつ、学生の収容定員40人につき1人以上の教員が日本語教育を担当する専務教員であること。

・ 日本語教育を担当する教員は、次のいずれかに該当する者であること。 なお、日本語教育を担当する 専務教員については、 日本語、言語、 文化若しくは教育に関する修士若しくは博士の学位又はそれらに相当する業績を有する者であること が望ましい。

ア 大学(短期大学を除く。以下この号において同じ。)又は大学院において日本語教育に関する教育課程を履修して所定の単位を修得し、かつ、当該大学を卒業し又は当該大学院の課程を修了した者

イ 大学又は大学院において日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し、かつ、当該大学を卒業し又は当該大学院の課程を修了した者

ウ 公益財団法人日本国際教育支援協会が実施する日本語教育能力検定試験に合格した者

エ 学士の学位を有し、かつ、日本語教育に関する研修であって適当と認められるものを420単位時間以上受講し、これを修了した者

オ 上記に掲げる者のほか、日本語等教育別科等における日本語教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者

・ 日本語教育以外の科目を担当する教員は、当該日本語等予備教育別科等における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有する 者であること。なお、日本語教育以外の科目を担当する 専務教員については、 博士若しくは修士の学位又はそれらに相当する業績を有する者であること が望ましい。

・ 日本語教育を担当する教員の一週間当たりの授業担当時間数が、その指導経験及び当該日本語等予備教育別科等における職務内容の状況に応じて適切に定められていること 。

・ 日本語等予備教育別科等における日本語教育に係る教育課程の編成及び他の教員の研修の企画等について、中心となって担当する 、次のいずれにも該当する教員を主任教員として定めていること。

ア 当該日本語等予備教育別科等において日本語教育を担当する専務教員であること。ただし、大学の正規の課程と一体的に運営されている等の事情により特段の支障が生じないと認められる 場合には、日本語教育を担当する兼務教員をもってこれに代えることができる。

イ 教育課程の編成及び研修の企画等を行うのに必要な知識及び能力を有すること。

ウ 大学又は出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の留学の在留資格に係る基準の規定に基づき日本語教育機関等を定める件(平成2年法務省告示第145号)別表第1、別表第2又は別表第3に掲げる日本語教育機関の常勤の日本語教員として3年以上の経験を有する者であること。

・ 生活指導担当者は、学生の生活指導及び進路指導に関する知識を有する教員又は事務職員であって、学校教育法第9条各号に掲げる者に該当しないこと 。

④ 校地及び校舎等に関すること

・ 日本語等予備教育別科等の教育の目的を実現するために必要な校地及び校舎を備えること。

・ 大学の校舎のうち日本語等予備教育別科等が使用する部分の面積(大学の正規の課程と共用する面積を含む。)は、収容定員1人当たり 2.3 平方メートル以上であること。

・ 日本語等予備教育別科等を置く大学の全体の校舎の面積は、前号で算出される別科等の必要校舎面積と大学設置基準その他で定める 大学の正規の課程の必要校舎面積を合計した面積を上回ること。

・ 日本語等予備教育別科等を大学の正規の課程の校舎及びその附属施設のある校地以外の場所(以下「別地」という。)で開設する場合には、当該別地における校舎の面積が、当該別地における日本語等予備教育別科等の定員により算出される必要校舎面積を合計した面積を上回ること。

・ 日本語等予備教育別科等を別地で開設する場合には、当該別地において教室、事務室、学生自習室その他の施設が適切に整備され、教育にふさわしい環境が確保されていること。

⑤ 入学者の募集等に関すること

・ 入学者の募集に当たっては、入学を希望する者(以下「入学希望者」という。)に対し、 日本語等予備教育別科等の教育課程、学納金、出願資格及び選抜方法等その他必要な事項に関する情報の提供を適切な方法により正確かつ確実に行う こととしていること。

・ 入学者の選抜は、入学希望者が真に修学を目的とし、その目的を達成するために必要な能力・意欲・適性等を有していることを公正かつ妥当な方法により確認することとしていること。

・ 入学希望者が仲介者その他の留学の準備に関与する者に支払い又は支払うことを約束した金銭がある場合は、その名目及び額を適切な方法により把握することとしていること。

⑥ 在籍管理に関すること

・ 学生の出席状況及び学業成績を把握するとともに、長期欠席者や学業成績が良好でない者に対して連絡や指導を行うこととしていること。

・ 長期欠席者や学業成績が良好でない者に対して繰り返し連絡や指導を行ったにもかかわらず改善の見込みがない場合には、退学(非正規の課程への在籍を中止することを含む。以下同じ。) について協議する等の適切な対応を行うこととしていること。

・ 退学その他の処分を行う場合は、退学後の帰国や進学又は就職の指導等を行うこととしていること。

・ 学生の在留期間並びに資格外活動の許可の有無及び内容(当該活動を行う本邦の公私の機関の名称を含む。)を把握し、出入国管理法令に違反しないよう適切な指導及び助言を行うこと。

⑦ その他の事項に関すること

・ 当該日本語等予備教育別科等に関し、次に掲げる情報を公表することとしていること。

ア 入学者の数、収容定員、在籍する学生の数及び修了した者の数並びに修了後に学部等へ入学した者の数及び就職者数その他進学及び就職等の状況

イ 修了要件及び修了認定の基準

・ 上記に定めるもののほか、日本語等予備教育別科等の運営が適切に行われる体制を有すること。